森鴎外

兎に角、君、駄目だよ。

「兎に角、 君、 ライフと アアトが 別々になってゐる 奴は 駄目だよ。」森鴎外 『青年』Amazon最安値でセンスの光る古本屋【ふぃでりお書店】を出店中です。【 概念・時間・言説―ヘーゲル“知の体系”改訂の試み (叢書・ウニベルシタス) (単行本)アレクサンド…

そうすると百本目の蝋燭が消された時、真の化物

〜今日の本棚〜今日のつぶやき 【 今週の本棚:五味文彦・評 『進化考古学の大冒険』=松木武彦・著 土器の「美」、かぁぁ http://goo.gl/zwKd 】 「百物語とは 多数の人が集まって、 蝋燭を百本立てて置いて、 一人が一つずつ化物の話をして、 一本ずつ蝋燭…

今では只此話を誰かに書いて貰って、後世に残したい

「私はもうあきらめた。 譲歩に譲歩を重ねて、 次第に小さくなった 私の望は、 今では只此話を 誰かに書いて貰って、 後世に残したい と云ふ位のものである。」森鴎外 柄谷行人「神話と文学をめぐって」p.55 『反文学論』講談社学術文庫 1991

國王の横死の噂に掩はれ

「國王の横死の噂に掩はれて、レオニに近き漁師ハンスルが娘一人、おなじ時に溺れぬといふこと、問ふ人もなくて巳みぬ。」 森鴎外『うたかたの記』最終段落

夫婦が寝ている。

「六畳の間に、牀を三つ並べて取つて、七つになる娘を眞中に寝かして、夫婦が寝ている。」 森鴎外『半日』1段落

讀みさして寢た

「主人が讀みさして寢たのであらう。」 森鴎外『半日』1段落

主人の枕元には、ランプが微かに燃えて

「主人の枕元には、唯ゝ心を引込ませたランプが微かに燃えてゐる。」 森鴎外『半日』1段落

あはれ、この少女のこころは恆に狭き胸の内に閉ぢられて

「あはれ、この少女のこころは恆に狭き胸の内に閉ぢられて、こと葉となりてあらはるゝ便(たつき)なければ、その繊々たる指頭よりほとばしり出づるにやあらむ。」 森鴎外『文づかひ』12段落

文に綴りて見む

「…その概略を文に綴りて見む。」 森鴎外『舞姫』4段落

げに東に還る今の我は

「げに東に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、學問こそ猶心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、」 森鴎外『舞姫』3段落

夕餉畢りし迹をまだ方附けざる

「大理石の圓卓幾つかあるに、白布掛けたるは、夕餉畢りし迹をまだ方附けざるならむ。」 森鴎外『うたかたの記』上4

こよひも瓦斯燈の光、半ば開きたる窓に映じ

「こよひも瓦斯燈の光、半ば開きたる窓に映じて、内には笑ひさゞめく聲聞ゆるをり、かどにきかゝりたる二人あり。」 森鴎外『うたかたの記』上1

土佐の士卒は初からフランス 人に対して悪感情を懐いていた

「…先ず射撃したので、これに応戦したのではあるが、土佐の士卒は初からフランス人に対して悪感情を懐《いだ》いていた。それは土佐人が松山藩を討つために錦旗を賜わって、それを本国へ護送する途中、神戸でフランス人がその一行を遮《さえぎ》り留め、朝廷…

軍艦の襲撃がある かも知れぬから、

「とにかくこうなった上は是非がない。軍艦の襲撃があるかも知れぬから、防戦の準備をせいと云った。」 森鴎外『境事件』7段落目

かの水兵の脳天に打ち卸された

「この梅吉が隊の士卒を駆け抜けて、隊旗を奪って行く水兵に追い縋《すが》った。手に持った鳶口は風を切ってかの水兵の脳天に打ち卸《おろ》された。水兵は一声叫んで仰向に倒れた。梅吉は隊旗を取り返した。」 森鴎外『境事件』4段落目

そしてその當り前の事が嬉しいのである。

「日の明るく照つてゐる處に立つてゐれば、影が地に落ちる。地に影を落す爲めに立つてゐるのではない。立つてゐれば影が差すのが當り前である。そしてその當り前の事が嬉しいのである。」 森鴎外『木精』6段落目

門を敲くものがある。

「天保八年丁酉の暁方七つ時に、大阪西町奉行所の門を敲くものがある。」 森鴎外『大鹽平八郎』1段落目

ロダンが白髪頭をのぞけた。

「其時戸をこつゝ叩く音がして、戸を開いた。ロダンが白髪頭をのぞけた。」 森鴎外『花子』最後から5段落目

手真似で帰れと云っても、一人も聴かない。

「両隊長は諭《さと》して舟へ返そうと思ったが通弁がいない。手真似で帰れと云っても、一人も聴かない。そこで隊長が陣所へ引き立ていと命じた。兵卒が手近にいた水兵を捉えて縄を掛けようとした。水兵は波止場をさして逃げ出した。中の一人が、町家の戸口…

持っていないなら、通すには及ばない。

「フランスの兵が若《も》し官許を得て通るのなら、前以て外国事務係前宇和島藩主伊達伊予守宗城《だていよのかみむねき》から通知がある筈であるに、それが無い。よしや通知が間に合わぬにしても、内地を旅行するには免状を持っていなくてはならない。持っ…

堺の町人は、外国人に慣れぬので、驚き懼れて

「しかし神社仏閣《ぶっかく》に不遠慮に立ち入る。人家に上がり込む。女子を捉《とら》えて揶揄《からか》う。開港場でない堺の町人は、外国人に慣れぬので、驚き懼《おそ》れて逃げ迷い、戸を閉じて家に籠るものが多い。」森鴎外『境事件』3段落目

フランスの兵は大阪へ引き返した。

「そこへフランスの兵が来掛かった。その連れて来た通弁に免状の有無を問わせると、持っていない。フランスの兵は小人数なので、土佐の兵に往手《ゆくて》を遮《さえぎ》られて、大阪へ引き返した。」森鴎外『境事件』2段落目

都会は一時無政府の状況に陥った。

「明治元年戊辰《ぼしん》の歳《とし》正月、徳川慶喜《よしのぶ》の軍が伏見、鳥羽に敗れて、大阪城をも守ることが出来ず、海路を江戸へ遁《のが》れた跡で、大阪、兵庫、堺の諸役人は職を棄てて潜《ひそ》み匿《かく》れ、これ等の都会は一時無政府の状況…

聞えるものは谷川の音ばかりである。

「又前に待つた程の時間が立つ。聞えるものは谷川の音ばかりである。」 森鴎外『木精』23段落目

兩側に戸口があつて、窓は只一つある。

「久保田の這入つた、小さい一間は、相對してゐる兩側に戸口があつて、窓は只一つある。その窓の前に粧飾のない卓が一つ置いてある。窓に向き合つた壁と、其兩翼になつてゐる處とに本箱がある。」 森鴎外『花子』37段落目

村の家にちらほら燈火が附き初めた。

「闇が次第に低い處から高い處へ昇つて行つて、山々の嶺は最後の光を見せて、とうゝ闇に包まれてしまつた。村の家にちらほら燈火が附き初めた。」 森鴎外『木精』最後の段落

Auguste Rodinは爲事場へ出て来た。

「Auguste Rodinは爲事場へ出て来た。 廣い間一ぱいに朝日が差し込んでゐる。」 森鴎外『花子』1段落目

機嫌を伺ふやうに云ふのである

「「通譯をする人が一しよに来てゐますが。」機嫌を伺ふやうに云ふのである。」 森鴎外『花子』14段落目

此目は昔度々見たことのある目である。

「此目は昔度々見たことのある目である。併しその縁にある、指の幅程な紫掛かつた濃い暈は、昔無かつたのである。」 森鴎外『普請中』19段落目 M43.6

まだ普請中だ。

「普請中なのだ。さつき迄恐ろしい音をさせてゐたのだ。」 「…日本はまだそんなに進んでゐないからなあ。日本はまだ普請中だ。」 森鴎外『普請中』22段落目