今では只此話を誰かに書いて貰って、後世に残したい

「私はもうあきらめた。


譲歩に譲歩を重ねて、


次第に小さくなった


私の望は、


今では只此話を


誰かに書いて貰って、


後世に残したい


と云ふ位のものである。」

森鴎外


柄谷行人「神話と文学をめぐって」p.55
『反文学論』講談社学術文庫 1991