土佐の士卒は初からフランス 人に対して悪感情を懐いていた

「…先ず射撃したので、これに応戦したのではあるが、土佐の士卒は初からフランス人に対して悪感情を懐《いだ》いていた。それは土佐人が松山藩を討つために錦旗を賜わって、それを本国へ護送する途中、神戸でフランス人がその一行を遮《さえぎ》り留め、朝廷と幕府との和親を謀《はか》るためだと通弁に云わせ、錦旗を奪おうとしたと云う話が伝わっていたからである。」
森鴎外『境事件』6段落目