2008-07-21から1日間の記事一覧

メアリー・シェリー『最後の人』1826

「濁った海の北方遥かに位置する英国が、今や乗組員の多い巨船の姿を採って、夜ごとの我が夢を訪れ、風を支配して誇らかに波を切って進んできた」 メアリー・シェリー『最後の人』1826

手真似で帰れと云っても、一人も聴かない。

「両隊長は諭《さと》して舟へ返そうと思ったが通弁がいない。手真似で帰れと云っても、一人も聴かない。そこで隊長が陣所へ引き立ていと命じた。兵卒が手近にいた水兵を捉えて縄を掛けようとした。水兵は波止場をさして逃げ出した。中の一人が、町家の戸口…

持っていないなら、通すには及ばない。

「フランスの兵が若《も》し官許を得て通るのなら、前以て外国事務係前宇和島藩主伊達伊予守宗城《だていよのかみむねき》から通知がある筈であるに、それが無い。よしや通知が間に合わぬにしても、内地を旅行するには免状を持っていなくてはならない。持っ…

堺の町人は、外国人に慣れぬので、驚き懼れて

「しかし神社仏閣《ぶっかく》に不遠慮に立ち入る。人家に上がり込む。女子を捉《とら》えて揶揄《からか》う。開港場でない堺の町人は、外国人に慣れぬので、驚き懼《おそ》れて逃げ迷い、戸を閉じて家に籠るものが多い。」森鴎外『境事件』3段落目

フランスの兵は大阪へ引き返した。

「そこへフランスの兵が来掛かった。その連れて来た通弁に免状の有無を問わせると、持っていない。フランスの兵は小人数なので、土佐の兵に往手《ゆくて》を遮《さえぎ》られて、大阪へ引き返した。」森鴎外『境事件』2段落目

都会は一時無政府の状況に陥った。

「明治元年戊辰《ぼしん》の歳《とし》正月、徳川慶喜《よしのぶ》の軍が伏見、鳥羽に敗れて、大阪城をも守ることが出来ず、海路を江戸へ遁《のが》れた跡で、大阪、兵庫、堺の諸役人は職を棄てて潜《ひそ》み匿《かく》れ、これ等の都会は一時無政府の状況…