2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

慶喜は政治家である。

「慶喜は政治家である。政治家を小説の主人公にして成功した例は、シュテファン・ツヴァイクの「ジョセフ・フーシェ」のほか、わずかの例しかない。なぜならば政治家は政治的事象のなかでしか存在せず、当然のことながら政治的事象の変転のなかでしかとらえ…

柳田國男「サン・セバスチャン」より引用

「誰が書いたか知らぬが聚楽物語という本などは、是より外には別の目的も無い物語だった。豊臣秀次の三十三人の女房が、一人ずつ鴨の川原に引出されて頚を斬られる。誰は二十何歳の花の如き美人で、斯ういう姿をして殺された。誰それはまだ十五の初々しい眼…

大樹公、今日の心中さこそと察し奉るby竜馬

「大樹公(将軍)、今日の心中さこそと察し奉る。よくも断じ給へるものかな、よくも断じ給へるものかな。予、誓ってこの公のために一命を捨てん。」司馬遼太郎『竜馬がゆく』

存在するだけで義務を負わせられるべきものなのか?

「それでも、まだ私には信じることができないのだ……人間はただ、存在するというだけで、もう義務を負わせられるべきものなのか?……そうかもしれないとも思う、親子喧嘩で裁くのはいつも子供のほうにきまっている……たぶん、意図のいかんにかかわらず、つくっ…

歌うても泣いても人は昔より一段と美しくなった

「それよりさらに隠れた変動が、我々の内側にも起こっている。すなわち軽くふくよかなる衣料の快い圧迫は、常人の肌膚を多感にした。胸毛や背の毛の発育を不必要ならしめ、身と衣類との親しみを大きくした。すなわち我々に裸形の不安が強くなった。一方には…

大和民族が思想の発表及び理解の用具として使用し

「我々が 国語と認めるものは 日本帝国の中堅たる 大和民族が 思想の発表及び理解の用具として 古来使用し来り、 又現に使用しつつあり、 将来も之によつて 進むべき言語 をいふのである。」山田孝雄 「国語とは何ぞや」

柳田その人と心中でもしようとしているのか

「民俗学はいったい、 「ひとつの日本」の 幻影を抱いて、 柳田その人と 心中でも しようとしているのか」赤坂憲雄 「日本像の転換をもとめてー方法としての「いくつもの日本」へ」 『日本を問いなおす(いくつもの日本1)』岩波新書 2002

古人はいかにして次から次へ承け継がせようとしたか

「私が説いてみたい と思っていたのは、 国語を護りはぐくみ、 養い育てる働きを、 古人はいかにして 次から次へ 承け継がせようとしていたか という点である。」柳田國男 『方言覚書』

ボクシングにラッキーパンチはない!!宮田父より

「ボクシングに ラッキーパンチはない!! 結果的に 偶然当たったパンチにせよ、 それは練習で 何百何千と振った拳だ。 その拳は生きているのだ」 森川ジョージ 『はじめの一歩』 宮田の父

だれが話そうとかまわないではないか。

「だれが話そうと かまわないではないか、 だれかが話したのだ、 だれが話そうと かまわないではないか。」 サミュエル・ベケット この文章にエクリチュールの根本的な倫理原則がある、とフーコーは言った。

あんたには立派な足がついてるじゃないか

「あきらめたらそこで試合終了だよ」 井上 雄彦 『スラムダンク』 安西監督が三井にかけた言葉 「戦場でおびえたことを、恥じることは決してない、、、恥ずべきは、人間の尊厳を根こそぎ奪い取る、戦争や社会体制なのだ」 浦沢 直樹 『パイナップルARMY』 ジ…

うつぶせに横たわっていた。死んでいた。安部公房

「客が来ていた。 そろえた両足を ドアのほうに向けて、 うつぶせに横たわっていた。 死んでいた。」安部公房 『無関係な死』 冒頭書き出し

彼なら、まちがいなく君を幸せにしてくれる

「のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。 あの青年は人の幸せを願い、 人の不幸を悲しむことのできる人だ。 それが人間にとって大事なことなんだからね。彼なら、まちがいなく君を幸せにしてくれると、僕は信じているよ。」藤子・F・不二雄 『ド…

なくしたものをとりもどすことはできないけど、

「なくしたものを とりもどすことはできないけど、 忘れてたものなら 思い出せますよね。 ....監督。」あだち充 『タッチ』 上杉達也のセリフ

お金がどの客にも一度はきつとする話であつた。

「お金がどの客にも一度はきつとする話であつた。 どうかして間違つて二度話し掛けて、 その客に「ひゆうひゆうと云ふのだらう」なんぞと、 先を越して云はれようものなら、 お金の悔しがりやうは一通りではない。 なぜと云ふに、 あの女は一度来た客を忘れ…

心に病ある人の催眠薬として小説を書いている安吾

「すくなくとも、 僕は人の役に 多少でも立ちたいために、 小説を書いている。 けれども、 それは、 心に病ある人の 催眠薬としてだけだ。 心に病なき人にとっては、 ただ毒薬であるにすぎない。」坂口安吾「青春論」

僕も多くの批評家とともに、金閣寺を傑作に数える

「…「事実」を仮面とした 告白の上に、 氏のもっとも 世評のよかった小説の系列があることは たしかです。 「金閣寺」は そのなかでも 出色の作であり、 僕も多くの批評家とともに、 これを三島氏の 傑作に数えるものです。」 中村光夫 「「金閣寺」解説」

この戦争をやった者は誰、東条であり軍部であるか。

「この戦争をやった者は誰であるか、 東条であり 軍部であるか。 そうでもあるが、 しかしまた、 日本を貫く巨大な生物、 歴史のぬきさしならぬ 意志であったに相違ない。 日本人は 歴史の前では ただ運命に従順な 子供であったにすぎない。」坂口安吾「堕落…

…厭人による退屈は発作なしには済まぬ。

「…厭人による退屈は 発作なしには済まぬ。 これは 自殺を思っていた 青年期の経験で、 私はよく知っている。」小林秀雄 「金閣焼亡」

女の人には秘密が多い。

「女の人には 秘密が多い。 男が何の秘密も 意識せずに過ごしている 同じ生活の中に、 女の人は いろいろの微妙な秘密を 見つけだして 生活しているものである。」坂口安吾「青春論」

坂口安吾「青春論」冒頭書き出し

「今が自分の青春だ というようなことを 僕は まったく自覚した覚えがなくて 過ごしてしまった。 いつの時が 僕の青春であったか。 どこにも区切りが 見当たらぬ。」坂口安吾「青春論」冒頭書き出し

人はねぐらに急ぐときだが、おれには帰る家がない

「日が暮れかかる。 人はねぐらに急ぐときだが、 おれには帰る家がない。 おれは 家と家との間の狭い割目を ゆっくり歩きつづける。 街じゅうこんなにたくさんの家が並んでいるのに、 おれの家が一軒もないのは なぜだろう?…… と、 何万遍かの疑問を、 また…