かの水兵の脳天に打ち卸された

「この梅吉が隊の士卒を駆け抜けて、隊旗を奪って行く水兵に追い縋《すが》った。手に持った鳶口は風を切ってかの水兵の脳天に打ち卸《おろ》された。水兵は一声叫んで仰向に倒れた。梅吉は隊旗を取り返した。」
森鴎外『境事件』4段落目