◇◆小説の書き方<1>書き出し◆◇

新居浜が舞台の作品、冒頭書き出し

「「ママ、びっくりしないで、 泣かないで、落着いてね。 そう、わたしは旅に出たの。 ただの家出じやないの、 旅に出たのよ(つづく)」」素九鬼子 『旅の重さ』 冒頭書き出し

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

「国境の長いトンネルを抜けると 雪国であった。 夜の底が白くなった。 信号所に汽車が止った。」川端康成 『雪国』冒頭書き出し ブログ内検索Amazon最安値でセンスの光る古本屋【ふぃでりお書店】を出店中です。コトバを探す(例えば、「愛」「恋」「人間」…

私は、その男の写真を三葉、見たことがある。

「私は、その男の写真を三葉、見たことがある。 一葉は、その男の、幼年時代、とでも言うべきであろうか、 十歳前後かと推定される頃の写真であって、 その子供が大勢の女のひとに取りかこまれ、 (それは、その子供の姉たち、妹たち、それから、従姉妹たち…

メロスは激怒した。

「メロスは激怒した。 必ず、 かの邪智暴虐の王を 除かなければならぬ と決意した。」太宰治『走れメロス』冒頭書き出し

初江はそっと自分の写真に手を三島『潮騒』むすび

「初江はそっと 自分の写真に手をふれて、 男に返した。 少女の目には矜りがうかんだ。 自分の写真が新治を守った と考えたのである。 しかしそのとき 若者は眉を聳やかした。 彼はあの冒険を切り抜けたのが 自分の力であることを 知っていた。」三島由紀夫 …

村長さんの処の米倉から、白米を四俵盗んで

「村長さんの処の米倉から、白米を四俵盗んで行ったものがある。 あくる朝早く駐在の巡査さんが来て調べたら、 俵を積んで行ったらしい車の輪のあとが、 雨あがりの土にハッキリついていた。 そのあとをつけて行くと、町へ出る途中の、 とある村外れの一軒屋…

夢野久作 『悪魔祈祷書』冒頭書き出し

「いらっしゃいまし。お珍らしい雨で御座いますナアどうも……こうもダシヌケに降り出されちゃ敵いません。 いつも御|贔屓になりまして……ま……おかけ下さいまし。一服お付けなすって……ハハア。傘をお持ちにならなかった。ヘヘ、どうぞ御ゆっくり……そのうち明る…

『幸福の王子』冒頭書き出し

「町の上に高く柱がそびえ、 その上に幸福の王子の像が立っていました。 王子の像は全体を薄い純金で覆われ、 目は二つの輝くサファイアで、 王子の剣のつかには 大きな赤いルビーが光っていました。」オスカー・ワイルド(結城浩訳) 『幸福の王子』冒頭書…

初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、鴈茸、ぬめり茸、

「初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、鴈茸、ぬめり茸、 霜降り茸、獅子茸、鼠茸、皮剥ぎ茸、米松露、麦松露なぞいう きのこ連中がある夜集まって、談話会を始めました。 一番初めに、初茸が立ち上って挨拶をしました。 「皆さん。この頃はだんだん寒くなり…

「アッハッハッハッハッ……」

「「アッハッハッハッハッ……」 冷めたい、底意地の悪るそうな高笑いが、小雨の中の片側松原から聞こえて来た。 小田原の手前一里足らず。文久三年三月の末に近い暮六つ時であった。 石月平馬はフット立止った。その邪悪な嘲笑に釣り寄せられるように 松の雫…

『詩を書く少年』詩はまったく楽に、次から次へ、

「詩はまったく楽に、 次から次へ、 すらすらとできた。 学習院の校名入りの 三十頁の雑記帳はすぐ尽きた。 どうして詩がこんなに 日に二つも三つもできるのだろうと 少年は訝かった。 一週間病気で寝ていたとき、 少年は「一週間詩集」というのを編んだ。 …

牛乳ってのはね、生きてるもんだろ?分る?

「……負けちゃいられねえよなあ ……勝負だもんなあ ……負けるために、 勝負してるわけじゃねえんだからなあ ……あ、これ、昨日の牛乳じゃないか! だめだよ、 しようがねえなあ、 いくら冷蔵庫にいれておいたって、 だめなんだよ。 牛乳ってのはね、 生きてるも…

ああ今の東京、昔の武蔵野。

「ああ今の東京、昔の武蔵野。 今は錐も立てられぬほどの賑わしさ、 昔は関も立てられぬほどの広さ。 今 仲の町で遊客に睨みつけられる烏も 昔は海辺四五町の漁師町で わずかに活計を立てていた。」山田美妙 『武蔵野』 冒頭書き出し Amazon最安値でセンスの…

「何しろ項羽と云う男は、英雄の器じゃないですな。」

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「「何しろ項羽と云う男は、英雄の器じゃないですな。」 漢の大将|呂馬通は、ただでさえ長い顔を、 一層長くしながら、疎な髭を撫でて、こう云った。 彼の顔のまわりには、十人あまりの顔が、 皆まん中に置い…

「子供の時の愛読書は「西遊記」が第一である。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「子供の時の愛読書は「西遊記」が第一である。 これ等は今日でも僕の愛読書である。 比喩談としてこれほどの傑作は、 西洋には一つもないであらうと思ふ。 名高いバンヤンの「天路歴程」なども 到底この「西遊…

信子は女子大学にゐた時から、才媛の名声を担つてゐた。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「信子は女子大学にゐた時から、 才媛の名声を担つてゐた。 彼女が早晩作家として文壇に打つて出る事は、 殆誰も疑はなかつた。 中には彼女が在学中、 既に三百何枚かの自叙伝体小説を書き上げた などと吹聴し…

支那の上海の或町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度人の婆さんが一人

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「支那の上海の或町です。 昼でも薄暗い或家の二階に、 人相の悪い印度人の婆さんが一人、 商人らしい一人の亜米利加人と 何か頻に話し合っていました。 「実は今度もお婆さんに、占いを頼みに来たのだがね、――…

伴天連うるがんの眼には、外の人の見えないものまでも見えたさうである。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「伴天連うるがんの眼には、 外の人の見えないものまでも見えたさうである。 殊に、 人間を誘惑に来る地獄の悪魔の姿などは、 ありありと形が見えたと云ふ、 ――うるがんの青い瞳を見たものは、 誰でもさう云ふ…

浅草の仁王門の中に吊った、火のともらない大提灯。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「1 浅草の仁王門の中に吊った、 火のともらない大提灯。 提灯は次第に上へあがり、 雑沓した仲店を見渡すようになる。 ただし大提灯の下部だけは消え失せない。 門の前に飛びかう無数の鳩。」芥川龍之介 「浅…

「自分は菊池寛と一しょにいて、気づまりを感じた事は一度もない。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「自分は菊池寛と一しょにいて、 気づまりを感じた事は一度もない。 と同時に退屈した覚えも皆無である。 菊池となら一日ぶら/\していても、 飽きるような事はなかろうと思う。 (尤も菊池は飽きるかも知れな…

「保吉はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「保吉はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。 ずつと以前から、 ――或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。 彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。」 芥川龍之介 「あばばばば」…

ある春の夕、Padre Organtino はたった一人、

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「ある春の夕、Padre Organtino はたった一人、 長いアビト(法衣)の裾を引きながら、 南蛮寺の庭を歩いていた。 庭には松や檜の間に、 薔薇だの、橄欖だの、月桂だの、西洋の植物が植えてあった。 殊に咲き始…

元慶の末か、仁和の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「元慶の末か、仁和の始にあつた話であらう。 どちらにしても時代はさして、 この話に大事な役を、勤めてゐない。 読者は唯、平安朝と云ふ、 遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、 知つてさへゐてくれれば、よ…

これはある精神病院の患者、――第二十三号がだれにでもしゃべる話である。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「序 これはある精神病院の患者、 ――第二十三号がだれにでもしゃべる話である。 彼はもう三十を越しているであろう。 が、一見したところはいかにも若々しい狂人である。 彼の半生の経験は、――いや、そんなこと…

高志の大蛇を退治した素戔嗚は、櫛名田姫を娶ると同時に、足名椎が治めてゐた部落の長となる事になつた。

◆◇芥川龍之介の他の小説の冒頭書き出しはココ◆◇「高志の大蛇を退治した素戔嗚は、 櫛名田姫を娶ると同時に、 足名椎が治めてゐた部落の長となる事になつた。 足名椎は彼等夫婦の為に、出雲の須賀へ八広殿を建てた。 宮は千木が天雲に隠れる程大きな建築であ…

Two households, both alike in dignity,

シェイクスピアの他作品の冒頭書き出しはココACT I PROLOGUE Two households, both alike in dignity, In fair Verona, where we lay our scene, From ancient grudge break to new mutiny, Where civil blood makes civil hands unclean. From forth the fa…

夢の様な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、

「夢の様な幼少の時の追憶、 喜びも悲みも罪のない事許り、 それからそれと朧気に続いて、 今になつては、皆、仄かな哀感の霞を隔てゝ 麗かな子供芝居でも見る様に懐かしいのであるが、 其中で、十五六年後の今日でも猶、 鮮やかに私の目に残つてゐる事が二…

BERNARDO Who's there?

シェイクスピアの他作品の冒頭書き出しはココSCENE I. Elsinore. A platform before the castle. FRANCISCO at his post. Enter to him BERNARDO BERNARDO Who's there?FRANCISCO Nay, answer me: stand, and unfold yourself.BERNARDO Long live the king!F…

Noble patricians, patrons of my right,

シェイクスピアの他作品の冒頭書き出しはココACT I SCENE I. Rome. Before the Capitol.The Tomb of the ANDRONICI appearing; the Tribunes and Senators aloft. Enter, below, from one side, SATURNINUS and his Followers; and, from the other side, BA…

Hence! home, you idle creatures get you home

シェイクスピアの他作品の冒頭書き出しはココACT I SCENE I. Rome. A street. Enter FLAVIUS, MARULLUS, and certain Commoners FLAVIUS Hence! home, you idle creatures get you home: Is this a holiday? what! know you not, Being mechanical, you ough…