ある春の夕、Padre Organtino はたった一人、
「ある春の夕、Padre Organtino はたった一人、
長いアビト(法衣)の裾を引きながら、
南蛮寺の庭を歩いていた。
庭には松や檜の間に、
薔薇だの、橄欖だの、月桂だの、西洋の植物が植えてあった。
殊に咲き始めた薔薇の花は、木々を幽かにする夕明りの中に、
薄甘い匂を漂わせていた。それはこの庭の静寂に、
何か日本とは思われない、不可思議な魅力を添えるようだった。」
芥川龍之介
「神神の微笑」冒頭書き出し
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