柳田國男「サン・セバスチャン」より引用

「誰が書いたか知らぬが聚楽物語という本などは、是より外には別の目的も無い物語だった。豊臣秀次の三十三人の女房が、一人ずつ鴨の川原に引出されて頚を斬られる。誰は二十何歳の花の如き美人で、斯ういう姿をして殺された。誰それはまだ十五の初々しい眼ざしをして、夢を見るように死んで行ったという風に、一つ一つ詳しく説いて、それで話はおしまいになって居る」

柳田國男サン・セバスチャン」『定本柳田國男集』第二二巻 筑摩書房 1963