2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

硯箱をおいていて、ときおり墨をする。(ユーキャンのCMぢゃないよ)

「普通の現代人と同じく 私もたまにしか毛筆を用いないが、 それでも机上には 硯箱をおいていて、 ときおり墨をする。 墨をすることじたいに、 無心へと近づくようなよろこびがある。」 矢内原伊作 記事も2000件を突破し、ますます賑わいをみせるテクスト礼…

島尾敏雄 『出発は遂に訪れず』書き出し

「もし出発しないなら、その日も同じふだんの日と変るはずがない。 一年半のあいだ死支度をしたあげく、 八月十三日の夕方防備隊司令官から特攻戦発動の信令を受けとり、 遂に最期の日が来たことを知らされて、こころにもからだにも死装束をまとったが、 発…

ただたんに少数の女たちと飲食を共にするために、

「よく考えてみると、私はこの二年ばかり、 革命にも参加せず、国家や家族のために働きもせず、 ただたんに少数の女たちと飲食を共にするために、 金を儲け、夜をむかえ、朝を待っていたような気がします。」 武田泰淳 『もの喰う女』

ハンズワースといえば、バングラ・ビートの最大の拠点

「…イギリスにはインド、 パキスタン、バングラデシュなどからの移民が 数多く存在していた。 例えば、バーミンガムのハンズワースという地区は、 スティール・パルスやUB40などの ブリティッシュ・レゲエ・グループを 生み出したことで知られるが、 同時に…

「だが断る」

「あ… あいつを ひき込めば… あいつを 差し出せば… ほ…… ほんとに… ぼくの「命」…は… 助けてくれるのか?」 「…………」 「ニタァーッ ああ〜 約束するよ〜〜〜〜っ やつの『養分』と引き換えの ギブアンドテイクだ 呼べよ…早く呼べ!」 「だが断る この岸辺露…

だから、兵隊の恋愛といふのは、これはもう、馬鹿ばかしさの極致みたいなもんだ。

「世の中でいちばん馬鹿ばかしいものは、 二つあって、 一つは兵隊、 もう一つは恋愛だと思ふな。 だから、兵隊の恋愛といふのは、 これはもう、馬鹿ばかしさの極致みたいなもんだ。 絶対さうですよ。」 丸谷才一 『贈り物』

川は森林の脚をくぐって流れる。

「川は森林の脚をくぐって流れる。 ・・・・泥と、水底で朽ちた木の葉の灰汁をふくんで 粘土色にふくらんだ水が、 気のつかぬくらいしずかにうごいている。」 金子光晴 『マレー蘭印紀行』 「センブロン河」

なぜ私が妖怪にとりつかれたかというと、

「私は柳田国男の『妖怪談義』だとか 鳥山石燕の『百鬼夜行』なぞを 常に頭の中に入れ、 理解できない妖怪を、 なぜこうなるのか、 とヒマな時は考えることを常としている。 なぜ私が妖怪にとりつかれたかというと、 初めて右に書いたような妖怪の書に接した…

死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、

「死者たちは、濃褐色の液に浸って、 腕を絡みあい、頭を押しつけあって、 ぎっしり浮かび、また沈みかかっている。」 大江健三郎『死者の奢り』

十八歳だったから、一九六五年のことだ。

「その年、 ぼくは百六十二篇の小説を読んだ。 十八歳だったから、 一九六五年のことだ。」 宮本輝 『星々の悲しみ』

信じがたいと思われるでしょう。信じるということが現代人にとっていかに困難なことか

「信じがたいと思われるでしょう。 信じるということが現代人にとって いかに困難なことかということは、 わたくしもよく知っています。 それでいて最も信じがたいようなことを、 最も熱烈に信じているという、 この狂熱に近い話を、 どうぞ判断していただき…

寄せてはかえし寄せてはかえし

「寄せてはかえし 寄せてはかえし かえしては寄せる波の音は、 何億年ものほとんど永劫にちかいむかしから この世界をどよもしていた。」 光瀬龍「百億の昼と千億の夜」

それは私の体を、であって、心では決して、ない。

「スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。 ただし、それは私の体を、であって、 心では決して、ない。」 山田詠美 『ベッドタイムアイズ』

「朝から話をはじめよう。

「朝から話をはじめよう。 すべてよき物語は 朝の薄明の中から出現するものだから。」 池澤夏樹 『マシアス・ギリの失脚』

だまされてはいけない。ワイセツなどという「妄想」

「だまされてはいけない。ワイセツなどという 「妄想」 を存在させてはいけないのである。 人間性を全的に容認し、 一切の抑圧を解放するとき、 ワイセツ概念はおのずから 消え去ることを知るべきなのである。」 澁澤龍彦 〜テクスト礼讃〜 http://fiderio.b…

坂口安吾『桜の森の満開の下』書き出し

「桜の花が咲くと人々は 酒をぶらさげたり団子をたべて 花の下を歩いて絶景だの 春ランマンだのと浮かれて 陽気になりますが、これは嘘です。」 坂口安吾『桜の森の満開の下』

かの七八百年の間武門の暴力の根柢となつて苦しめた野蛮道

「わたしは野蛮の遺風である武士道は嫌ですけれど、命がけで新しい人間の増殖に尽す婦道は永久に光輝があつて、かの七八百年の間武門の暴力の根柢となつて皇室と国民とを苦しめた野蛮道などとは反対に、真に人類の幸福は此婦道から生じると思ふのです。」與…

孔明我れたるあたわず

「人各能、不能あり、我れ孔明たるあたわず、孔明我れたるあたわず。」伊藤仁斎 〜テクスト礼讃〜 http://fiderio.blog68.fc2.com/blog-category-143.html

「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉みじんだろう」

「私はこの想像を熱心に追求した。「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉みじんだろう」そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った。」梶井基次郎『檸檬』末尾

苦悩に負けることは恥辱ではない。

「人間にとって、苦悩に負けることは恥辱ではない。むしろ快楽に負けることこそ恥辱である。」ブレーズ・パスカル今日の気分 【The Future Sound of London“Lifeforms”】違う曲聴きたかったんだが、iTunsつけたら目についた。再生198回。快楽に負けた。

墓の中の誕生のことを語らねばならぬ。

「終わった所から始める旅に、 終わりはない。 墓の中の誕生のことを語らねばならぬ。」 安部公房『終わりし道の標に』

完璧な文章などといったものは存在しない。

「 「完璧な文章などといったものは存在しない。 完璧な絶望が存在しないようにね。」 僕が大学生のころ 偶然に知り合った作家は 僕に向かってそう言った。」 村上春樹 『風の歌を聴け』

接合できるものはすべて接合するコラージュ、人を食った悪意

「このアルバムを聴いて、僕が思い出した音楽はふたつある。ひとつは70年代の終わりにデヴィッド・バーンとブライアン・イーノが製作したアルバム『ブッシュ・オブ・ゴースツ』。このアルバムはそこでの「未来派ワールド・ミュージック」というべき試みをヒ…

「シーザーを理解するためには、シーザーである必要はない」

「しばしば言われてきたように、「シーザーを理解するためには、シーザーである必要はない」。そうでなければ、あらゆる歴史記述は無意味であろう。」マックス・ウェーバー 『理解社会学のカテゴリー』 〜テクスト礼讃〜 http://fiderio.blog68.fc2.com/blog…

土方なくしては肉体論は語れない

「日本の現代舞踏史の上で土方なくしては肉体論は語れないし、肉体論によって接近しなくては土方は語れない」市川雅 『行為と肉体』 〜テクスト礼讃〜 http://fiderio.blog68.fc2.com/blog-category-143.html

中島敦が到達した「述べて作らず」という思想

「…私はかねて、中島敦が作家として最終的に到達したのが「述べて作らず」という思想ではなかったかと考えている。(中略)それは『狼疾記』の中島敦から『李陵』の作者への変貌、或いは『山月記』の作者から『名人伝』の中島敦への跳躍、その変貌跳躍の秘密…

喫茶店という、どこにも属さないニュートラルな空間は、

「喫茶店という、どこにも属さないニュートラルな空間は、そこを利用するものにとってだけ固有の意味をもつ。その意味は、やがて時間をも意味づけてゆくのだ。」蜷川幸雄

誰か慌たゞしく門前を馳けて行く足音がした時、

「誰か慌たゞしく門前を馳けて行く足音がした時、 代助の頭の中には、大きな俎下駄が空から、 ぶら下つてゐた。 けれども、その俎下駄は、 足音の遠退くに従つて、すうと頭から抜け出して 消えて仕舞つた。さうして眼が覚めた。 枕元を見ると、八重の椿が一…

どこで生まれたか頓と見当がつかぬ。

「吾輩は猫である。 名前はまだ無い。 どこで生まれたか 頓と見当がつかぬ。」 夏目漱石『我輩は猫である』

労働力を資本家は、 一日ぎめ、一週間ぎめ、ひと月ぎめで買う

「資本家は貨幣をもって彼らの労働を買うのであり、彼らは貨幣とひきかえに自分の労働を資本家に売るように見える。だが、これは外観にすぎない。彼らが現実に資本家にたいして貨幣とひきかえに売るものは、彼らの労働力である。この労働力を資本家は、一日…