2012-01-01から1年間の記事一覧

心で手を合わせる気持ちにさせた。

「路地に降る雨も雪も決して冷たいばかりではない、痛いばかりではないと大きなものに心で手を合わせる気持ちにさせた。」中上健次 「半蔵の鳥」

だれにも承認されない権利などなにほどのものでもない

「権利の観念とは義務の観念に従属し,これに依拠する。ひとつの権利はそれじたいとして有効なのではなく,もっぱらこれに呼応する義務によってのみ有効となる。権利に実効性があるかいなかは,権利を有する当人ではなく,その人間になんらかの義務を負うこ…

中上健次「半蔵の鳥」

「初めて男の精があふれた時、半蔵は久市の女房の中に、自分の血が思わず流れ出してしまった気がしたのだった。」中上健次 「半蔵の鳥」

古人の求めたる所を求めよ

「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」(空海の語による)松尾芭蕉「柴門の辞」

私はまず「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」といい放ちました。

「私はまず「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」といい放ちました。これは二人で房州を旅行している際、Kが私に向って使った言葉です。私は彼の使った通りを、彼と同じような口調で、再び彼に投げ返したのです。しかし決して復讐ではありません。私は復讐…

想像力は歴史家にとって危険である。なぜなら、

「しかし、想像力は歴史家にとって危険である。なぜなら、彼は、彼が想像したものがまさに真相であったこと、そしてそれが、詩人や小説家の活動の特質を特徴づけるために使われる意味で、彼の『想像力』の所産ではないことを、知ることができないからである…

テクスト性の概念は、世界を、言語的テクスト、書物、伝統、批評、教育に還元することを意味しない

「テクスト性の理論家たちは、マルクスを世界(歴史および社会)の理論家として、また労働と生産-流通-分配の力のテクストとして読む。そしてフロイトを、自我の理論家として、意識と無意識のテクストとして読む。このような、人間のテクスト性は、世界と自我…

世阿弥『花伝書』より

「初心忘るべからず」世阿弥 『花伝書』

名前によって名付けられたものはすべて一つ

「もし普遍的なものがあるとしたら、それは名前だけである。名前によって名付けられたものはすべて一つしか存在しえない個別的なものである。」トマス・ホッブス 『リヴァイアサン』

くすりあればとて

「くすりあればとて毒をこのむべからず」親鸞『歎異抄』 いわゆらモラルハザードに対する指摘

3つの莫れ

「功を求むる莫れ、拙を蔽う莫れ、他人に恥しがる莫れ」正岡子規 「俳諧大要」

女はやわらかに…

「女はやわらかに心うつくしきなんよき」紫式部『源氏物語』宿木

私はその人に対して、ほとんど信仰に近い愛をもっていたのです。

「私はその人に対して、ほとんど信仰に近い愛をもっていたのです。私が宗教だけに用いるこの言葉を、若い女に応用するのを見て、あなたは変に思うかも知れませんが、私は今でも固く信じているのです。本当の愛は宗教心とそう違ったものでないという事を固く…

カロルス・リンナエウスの分類

「自然は飛躍をなさず」カール・フォン・リンネ自然の急激な変化を認めないスウェーデンの博物学者リンネの言葉

冷やかな頭で新しい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べる方が生きていると信じる

「私は今あなたの前に打ち明けるが、私はあの時この叔父の事を考えていたのです。普通のものが金を見て急に悪人になる例として、世の中に信用するに足るものが存在し得ない例として、憎悪と共に私はこの叔父を考えていたのです。私の答えは、思想界の奥へ突…

生れた所は空気の色が違います、土地の匂いも格別です、

「私はいつでも学年試験の済むのを待ちかねて東京を逃げました。私には故郷がそれほど懐かしかったからです。あなたにも覚えがあるでしょう、生れた所は空気の色が違います、土地の匂いも格別です、父や母の記憶も濃かに漂っています。一年のうちで、七、八…

恋の神経はだんだん麻痺して来るだけです

「香をかぎ得るのは、香を焚き出した瞬間に限るごとく、酒を味わうのは、酒を飲み始めた刹那にあるごとく、恋の衝動にもこういう際どい一点が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。一度平気でそこを通り抜けたら、馴れれば馴れるほど、親しみが…

自然は、[自体的に]運動の原理をもつものの本質

「第一の、そして主要な意味で自然と言われるものは、そのもの自身のうちに、そのもの自身として[自体的に]運動の原理をもつものの本質である。」アリストテレス 『自然学』

事物が運動・静止することの原理であり原因

「事物の自然とは第一義的に自体的に、そして付帯的にではなく、事物のうちに存していて、事物が運動することの、または静止することの或る種の原理であり原因である。」アリストテレス 『自然学』

あの時の「おれが死んだら」は単純な仮定であった

「「おれが死んだら、どうかお母さんを大事にしてやってくれ」私はこの「おれが死んだら」という言葉に一種の記憶をもっていた。東京を立つ時、先生が奥さんに向かって何遍もそれを繰り返したのは、私が卒業した日の晩の事であった。私は笑いを帯びた先生の…

ああ、ああ、天子様もとうとうおかくれになる。己も……

「崩御の報知が伝えられた時、父はその新聞を手にして、「ああ、ああ」といった。「ああ、ああ、天子様もとうとうおかくれになる。己も……」父はその後をいわなかった。」夏目漱石 『こころ』中 両親と私、五

私の心臓を立ち割って、温かく流れる血潮を啜ろうとしたからです

「私は時々笑った。あなたは物足りなそうな顔をちょいちょい私に見せた。その極あなたは私の過去を絵巻物のように、あなたの前に展開してくれと逼った。私はその時心のうちで、始めてあなたを尊敬した。あなたが無遠慮に私の腹の中から、或る生きたものを捕…

「金さ君。金を見ると、どんな君子でもすぐ悪人になるのさ」

「「さきほど先生のいわれた、人間は誰でもいざという間際に悪人になるんだという意味ですね。あれはどういう意味ですか」「意味といって、深い意味もありません。――つまり事実なんですよ。理屈じゃないんだ」「事実で差支えありませんが、私の伺いたいのは…

「田舎者はなぜ悪くないんですか」私はこの追窮に苦しんだ

「先生はその上に私の家族の人数を聞いたり、親類の有無を尋ねたり、叔父や叔母の様子を問いなどした。そうして最後にこういった。「みんな善い人ですか」「別に悪い人間というほどのものもいないようです。大抵田舎者ですから」「田舎者はなぜ悪くないんで…

強い太陽の光が、眼の届く限り水と山とを照らしていた

「そうして強い太陽の光が、眼の届く限り水と山とを照らしていた。私は自由と歓喜に充みちた筋肉を動かして海の中で躍り狂った。先生はまたぱたりと手足の運動を已めて仰向けになったまま浪の上に寝た。私もその真似をした。青空の色がぎらぎらと眼を射るよ…

われわれは現在についてほとんど考えない。

「われわれは現在についてほとんど考えない。たまに考えることがあっても、それはただ未来を処理するために、そこから光をえようとするにすぎない。現在はけっしてわれわれの目的ではない。過去と現在はわれわれの手段であり、未来のみが目的である。」ブレ…

人間は自分が幸福であることを知らない

「人間が不幸なのは、自分が幸福であることを知らないからだ。ただそれだけの理由なのだ。」ドストエフスキー 『悪霊』

信仰のあらゆる形式を超えて

「信仰のあらゆる形式を超えて信仰にしがみつけ。」テニソン 「古代の賢者」

思考は中庸なるものによってのみ存続する

「思考は極端なるものによってのみ進むが、しかし中庸なるものによってのみ存続する。 」ポール・ヴァレリー 「ヨーロッパ人」

城郭は守る者のために利なれども攻る者のためには害なり

「議論の本位を定めざればその利害得失を談ずべからず。城郭は守る者のために利なれども攻る者のためには害なり。敵の得は味方の失なり。往者の便利は来者の不便なり。故に是等の利害得失を談ずるには、先ずそのためにする所を定め、守る者のためか、攻る者…