だれにも承認されない権利などなにほどのものでもない

「権利の観念とは義務の観念に従属し,これに依拠する。ひとつの権利はそれじたいとして有効なのではなく,もっぱらこれに呼応する義務によってのみ有効となる。権利に実効性があるかいなかは,権利を有する当人ではなく,その人間になんらかの義務を負うことを認める他の人びとが決める。しかるに義務は承認と同時に有効となる。たとえだれからも承認されずとも,その十全性はいささかも失われない。だが,だれにも承認されない権利などなにほどのものでもない。」

シモーヌ・ヴェーユ
『根をもつこと』上・下(岩波文庫