2008-09-25から1日間の記事一覧

私は幼なかったから、保田與重郎などいなかった。

「私は幼なかったから、保田與重郎などいなかった。高坂正顕も高山岩男もいなかった。『総力戦理論』も『世界史の哲学』も『近代の超克』もなかった。『万葉集』の文庫本も『葉隠』も、いかにして死ぬかの考察もなかった。私の世界には、そのとき、そうした…

いわばひとつの偏見から出発するもの

「注釈は、価値評価とはいささかちがう。価値評価は、いやがうえにも慎重に明暗を光と影に分けてゆくものだが、注釈はそれとはちがって、対象とするテキストを古典とみなすところから、したがっていわばひとつの偏見から出発するものであり、また、テキスト…

自分に必要な部分だけを抽き取って見がちなもの

「誰でも、風景に接した場合、つい自分に必要な部分だけを抽き取って見がちなものである。」 安部公房『箱男』