大正期の特色は、文学の文壇化で、昭和期のそれは社会化

「大正期の特色が、文学の文壇化(あるいは社会からの逸脱)であったのにたいして、昭和期のそれが社会化であることは云うまでもありませんが、両者の間のいまひとつの大きな違いは、前者が作家にとって意識的努力の結果であるのにたいし、後者はジャーナリズムの繁栄という事実の力で成就されたという点です。それが文壇の崩壊という現象として、しばしば論議された理由はそこにあります。」

中村光夫
「長命と短命」