保田は知識の放恣さの中に神々の指示を楽しむことを教えたが、小林の方は…

「保田は知識の放恣さの中に神々の指示を楽しむことを教えたが、小林の方はちょうど肉体を統御するのと同じように、精神を鍛練する秘訣のようなもののしんどさを教えた。卑俗にいえば保田は女性的であり、小林の方が男性的であるとでもいえよう。(略)その印象の差は、前者が自然や歴史をイロニイという普遍的理念の脚注のようにみなしたのに対し、後者はどこまでもありのままの生活者の眼に、自然や歴史がどういうふうに見えるかという、強靭な常識の立場をとったがためであろう。」

橋川文三
「私的回想断片」