何故働かないつて、そりや僕が悪いんぢやない。

「何故働かないつて、そりや僕が悪いんぢやない。つまり世の中が悪いのだ。もつと、大袈裟に云ふと、日本対西洋の関係が駄目だから働かないのだ。第一、日本程借金を拵らへて、貧乏震ひをしてゐ国はありやしない。(中略)あらゆる方面に向かつて、奥行を削つて、一等国丈の間口を張つちまつた。なまじい張れるから、なほ悲惨なものだ。牛と競争をする蛙と同じ事で、もう君、腹が裂けるよ。」

夏目漱石
『それから』
無職で暮らす代助に向かって平岡が当たっていう。