それでいい……それだけでいいのだ

「探偵小説が文芸であるかドウカは責任を負う限りでない。或(あるい)は香水の化学方程式みたようなものかも知れぬ。又は美人のレントゲン写真に類する者かも知れぬ。
 だから題材の選択は無限の自由さを持っている筈である。だからその選択者の個性が、極端に深刻、強烈に出る筈である。
 それでいい……それだけでいいのだ。」
夢野久作『探偵小説の真使命』