明らかに、小林秀雄は、マルクスの言う商品が、

「明らかに、小林秀雄は、マルクスの言う商品が、物でも観念でもなく、いわば言葉て゜あること、しかもそれらの「魔力」をとってしまえば,物や観念すなわち「影」しかみあたらないことを語っている。この省察は、今日においても光っている。それは、『資本論』を言語学的に読もうとする構造主義の試みとは似て非なるものだ。言語学者には言葉に対する驚きがなく、経済学者には商品に対する驚きがない。それらの「魔力」の前に立ち止まったことのない者が、何を語りえよう。したがって、「価値形態論」に関する私の考察は、哲学・言語学・経済学といった区分にはとどまりえないのである。」
柄谷行人マルクスその可能性の中心』