テキストというものは、情況、時間、場所、そして社会などの中に絡め取られている

「重要な点は、テキストというものは、このうえなく純化された形を帯びている場合ですら、つねに情況、時間、場所、そして社会などの中に絡め取られているということ、要するにテキストというものは世界無い存在であり、したがって世界内的情況に関わるものであるということである。一つのテキストが保存されるか、暫時よそに置かれるか、図書館の本棚にあるかないか、危険物であるかないか―こういった問題はテキストの世界内存在性に関わることであって、この関わりという情況は読むという個人的な手続き以上に輻輳した問題なのである。」
エドワード・サイード(山形和美訳)『世界・テキスト・批評家』序章、1995年、法政大学出版局