テキストには中心点もなければ中心軌道もない。

「テキストには中心点もなければ中心軌道もない。それは空間的・時間的な物体とは異なる。その〈声〉は物語るペルソナというよりも、むしろいたずら書きのペンのようである。作家の視点からすれば、テキストはページの上のインク、紙の折り目、マラルメの言う〈読みの空隙〉、テキストたらんとする終わりなき野望である。テキストとは作家がテキストを作ろうとする純粋な記号である何ものかである。批評家の視点からすれば、テキストは、そこに彼が読むものは生を摸倣することはできないという証拠を提供する挑戦となる。」
エドワード・サイード 山形和美・小林昌夫『始まりの現象』第1章1992.2 法政大学出版局