フランスの文士たちはドイツのえらい学者たちにだまされて、

「フランスの文士たちはドイツのえらい学者たちにだまされて、民間信仰は中世をつうじてヨーロッパのどこでもおなじであったと思ったら、それは大まちがいだということである。善の力、つまりイエス・キリストの国についてはヨーロッパじゅうのものがみなおなじ考えをいだいていた。またローマ・カトリック教会がおなじ考えをいだかせるようにほねおってきた。この点について教会のきめた意向にそむくものは異端者と見なされた。けれども悪の力、つまりサタンの国については所によっていろいろちがう意見がひろがっていた。ゲルマン語系の北方の民族はこのサタンの国についてはローマン語系の南方の民族とはまったくちがった考えをいだいていた。」
ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』第一巻 宗教改革とマルチン・ルター