ロラン・バルト

「その第一の傾向によれば、分析は、世界中のあらゆる物語に対して、言うまでもなく 形式的な一個の物語モデル、「物語の構造」ないし「物語の文法」を確立しようとつと め、(ひとたびそれが見出されたら)個々の具体的な物語は、それに対する編差の観点 から分析される。これに対して、第二の傾向によれば、物語は(少なくともそれが可能 な場合には)、だちに〈テクスト〉の観念によって包摂される。〈テクスト〉とは、現 におこなわれつつある意味作用の空間のことであり、その過程のことであり、(中略)現 に進行しつつある生産活動として観察される。」
ロラン・バルト「エドガー・ポーの一短編のテクスト分析」(『記号学の冒険』花輪光訳−みすず書房刊−所収)