南方熊楠
「史を案ずるに、心性上の開化は、
物形上の開化とは大いに違い、一盛一衰一盛一衰するが、
決して今のものが昔にまされるといいがたし…
ハーバート・スペンセルなど、何ごとも進化進化というて、
宗教も昔より今の方が進んだようなこといえど、
受け取りがたし。
寺の作り方や塔の焼失保険が昔より行き届き、
また坊主の衣食がすすんだとか、
説教の引符多くくばるようになったとかいうて、
それは寺制僧事の進化とでもいうべきのみ、
別に宗教が進みしにはあらず。…
故に世界ということ、その開化の一盛一衰は、到底夢のようなものにて、
進化と思ううちに退化あり、退化するうちにも進歩あるなり」
南方熊楠(1894年3月4日土宜法龍宛書簡)
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