日本的なものといふこと



 
「本日日本的なものといふことが非常に多くの人々によつて云はれてゐる。ところでかういふ言葉や東洋的といふことばは概してヨーロッパ的な考へ方から出てくるものと思はれる。むしろこの反対に我国でヨーロッパ的といはれてゐるものに、僕らは日本的なことばを見出すのである。一時は日本的といふことが、世界の意志に対する一つの反対として、一つの舊時代として、ひ弱く浅はかなものの代名とされていいゐた。(略)今日尊敬すべき学識をもつ人々が、東洋的=日本的として構想してゐるものは、ヨーロッパ人の考へたアジア・有神論と無神論の永久のくりかへしに過ぎない歴史なき大陸といふ考へ方である。」 
 
「開花の思想ー日本的といふことー」
保田與重郎全集第四巻』講談社 p.310