終末から逆に照射された人間の障害・空洞・異種または同種交配の網の目である現在

「書物。それは紙のうえに印刷された文字の集積体でもなければ、ある著作者の観念の系譜が、言葉にあらわされたものでもない。それは表側の視線からみると、起源からやってくる人間の反復・霧散・逼迫の連続体であり、裏側の視線からみると、終末から逆に照射された人間の障害・空洞・異種または同種交配の網の目である現在のことだというべきだ。」

吉本隆明
『言葉からの触手』河出文庫 p.34