知りつつする真似は毎に失礼に当る。

「…真似には二つの種類が有る。知らず識らずに似て行く分は、感化即ち敬服であるが、知りつつする真似は毎に失礼に当る。即ち相手の思はくには構はず、自分ばかりか、他人にも笑はせようとする時に行なふのである。殊に古人は暇多く真似が上手で、真似て見たい特色には、をかしいものが昔は猶多かった。我々の行儀作法には笑はれて改良して来たものが多いのである。」

柳田國男
「笑はれる馬」
「水曜手帖」p.52『定本柳田國男集 第三巻』筑摩書房 昭和四十三年