自分が正常であるというためには、自分を共同化しなければならない

「医者と患者という主題が普遍的なのは、二人の相対的な関係においては、どちらが正常であるかということがついに決められないということにある。自分が正常であるというためには、自分を共同化しなければならない。逆にいえば、自分を共同化できているかぎり彼は正常だと信ずることができるので、そういう共同性そのものが異常であってもかまわない。ファシズムスターリニズムの時代には、それに反対する方が"異常"なのである。実際ソ連では、政治的反逆者は精神病院に入れられている。」

柄谷行人
「同一性と差異性について」
『半文学論』講談社学術文庫 1991 p.17