バルザックに魅了されないで何カ月も彼とともに過ごすわけにはいかなかった

「…読者は、わたしが、解剖しているこのテクストに対して深い賛美の念を抱いていることを強く感じてほしいと思いますね。いずれにしても、バルザックに魅了されないで何カ月も彼とともに過ごすわけにはいかなかったでしょう。それに、わたしひとりではなく、すでにジョルジュ・バタイユも『サラジーヌ』を限界的なテクストのひとつと認めていました。限界的なテクストとは、ひとりの偉大な作家の著作のなかで、ときどき現代性を垣間見せてくれるような、非常に奇妙な誘惑を表すテクストなのです。」

ロラン・バルト
『批評と自己批判』p.304