村はずれは異国であり、天国であり、地獄であり、異物の溜り場

「柄谷 昔、ポール・アンドラが、日本の近代文学のボーダー(境界)について論じたとき、空間的な感覚が『源氏物語』の頃とあまり変わってないということを言っている。あの世も、あの世としてきちっと構成されていない。それが地面の下にあるのか、天上にあるのかあいまいだ。仏教が入っても同じです。どっちにしてもそれを構成気がない。ダンテの『神曲』が示すような構成力、つまり、地獄や天国に何段階もつける構成力は全くないんです。日本人は、ほんとうは村はずれで終わり。

岩井 村はずれは異国であり、天国であり、地獄であり、ありとあらゆる異物の溜り場なのですね。」

柄谷行人岩井克人
『終わりなき世界』太田出版 1990 p.23