<ある>という普通の事実なのだ

「もはや夜通し見張るべきものものなどないときに、目醒めている理由など何もないのに夜通し眠らずにいる。すると、現前という裸の事実が圧迫する。…無の背後に浮かび上がるこの現前は、一個の存在でもなければ、空を切る意識の作用のなせるものでもなく、事物や意識をともどもに抱擁する<ある>という普通の事実なのだ」

エマニュエル・レヴィナス
『実存から実存者へ』

レヴィナスの「存在(ある)」は、主語と述語の区別が現れず、「無名」の夜、無(死)へ逃れることもできない、すべての人間が捕えられている根源的事実としての「存在(ある)」なのだ。