そしてすべてが、死刑廃止の主張へと集約される。

「『死刑囚最後の日』は


人を狂気せしむる作品だと、


ある人が言っている。


実際そこには、


死刑の判決を受けてから


断頭台にのぼせらるる最後の瞬間に至るまでの、


一人の男の肉体的および精神的苦悶が、


微細に解剖され抉剔されている。


生きてる首を切らるる、


自然から受けた生命を人為的に奪い去らるる、


その当人の現実的な苦悶が、


熱情をもって叙述されている。


そしてすべてが、死刑廃止の主張へと集約される。」


豊島与志雄「解説」
ユーゴー『死刑囚最後の日』1950 p.4