思想警察はウィンストンをうち砕いた。

「ここでちょっと、


ジョージ・オーウェル


『一九八四年』を取りあげてみよう。


ウィンストンはジュリアを


愛しているにもかかわらず、


思想警察の餌食になって


ジュリアを否定し、


裏切った。


それは思想警察が、


彼の最も恐れているものが


ネズミだということを発見したからだった。


飢えきったネズミのはいった籠が


ウィンストンの頭上に置かれたとき、


思わずウィンストンは叫んでいた。


「こんなことはジュリアにやってくれ!」。


思想警察はウィンストンをうち砕いた。


この部分は


身の毛もよだつような場面で、


気の滅入りそうなほど


現実味にあふれている。」

ジョージ・オーウェル
『一九八四』

ディーン・R・クーンツ
『ベストセラー小説の書き方』朝日文庫 p.219 1996