その意味では日本文明というものが歴然と存在します

「わたしが考えている


文明というのは、


むしろフランスにおける


シビリザシオンにちかいもの


でございまして、


精神文明も物質文明も


両方ともふくんでおります。


歴史的連続体としての


文明をかんがえている。


そのなかには


人間そのものがふくまれております。


人間の組織、


人間をとりまく


さまざまな装置、


道路であるとか、建築であるとか、


都市・産業、そういうさまざまな装置群、


さらにそれを運営するとりきめ、


つまり制度ですね。


その全体をふくんだもの、


それの歴史的連続体が


文明だというふうに


かんがえております。


いいかえると、


人間、装置、制度、組織の全体で


つくっているシステムが


ひとつの文明である、


その意味では日本文明というものが


歴然と存在します。」

梅棹忠夫
『京都の精神』角川ソフィア文庫 平成17 p.162