ずっと以前、僕がまだ九つで、この世が素晴らしく、

「ずっと以前、


僕がまだ九つで、


この世が素晴らしく、


人生がまだ美しく


不思議な夢であった頃、


僕以外の者が皆、


少しキ印だと思っていた


従兄のムーラッドが、


朝四時に家に来て


僕の部屋の窓をたたいた。


「アラム」


僕は飛びおきて、


窓の外を見た。


僕は自分の目が


信じられなかった。」

ウィリアム・サローヤン
『我が名はアラム』福武文庫 1987 冒頭書き出し