そのまめをカミソリで殺ぐのが面白かった。

「秋幸は手をひろげて見た。


つるはしを握る時も


シャベルを握る時も


手袋の類をしなかったので、


固いまめが出来ていた。


そのまめを


カミソリで殺ぐのが面白かった。


秀雄と五郎の事は、


てのひらのまめを


カミソリで殺ぐ楽しみを知らない者同士の、


諍いにすぎない。


あの男もそう考えているだろう、


と思った。


美智子が泣いて騒ぎ、


実弘が面子を気にして謝りに家まで来い、


と言うほどの事ではないのだった。


男にしてみれば、


人に頭を下げ謝るくらいなら、


そんな原因をつくった


自分の息子を


殴り殺してしまったほうがよい。」

中上健次枯木灘河出文庫 p.74

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