ペチャンコになった彼の悲鳴が、ちょいちょい顔を出し

「フローベルが


「馬鹿は花崗岩だ。打突って行けば、


当方がペチャンコになる許りだ」


と嘆いた。


彼は小説を書く時には、


ペチャンコになる事を、一生懸命注意したらしいが、


ボヴァリー夫人」だってペチャンコになった


彼の悲鳴が、ちょいちょい顔を出して居る。」


小林秀雄「断片十二」

小林秀雄全作品1様々なる意匠』新潮社 p.56