それでも少しも不平なく尽くしてくれるのをほん当にうれしく思った。

「その、頭が変に小さく見えた事が私の心を感傷した。貧乏と世帯でやつれている町子が急に可哀想になって来た。そっと上から覗き込んで見たら頸を少し内側にまげ込んですやすやねていた。きたない、はげちょろの着物をいつもの通り著ている。女だから結婚でどんな運命にでも合い得たろう。こんなにみすぼらしくなってそれでも少しも不平なく尽くしてくれるのをほん当にうれしく思った。」
内田百〓「百鬼園日記帳」