ああ少年の時に期望したことの中で、まア何を一つしでかしたか、

「ああ少年の時に期望したことの中で、まア何を一つしでかしたか、少壮のころにさえ何一つ成遂げなかッた者が、今老の坂に杖突く身となッて、はたして何事ができようぞ、もはや無益だ、もはや光沢も消え、色も衰え、ただ風を待つ凋れた花、その風が吹く時は……」
嵯峨の舎お室『初恋』末尾