輸入と国産化のドラマの一例である

「確かに西田(幾多郎)は、西洋からもたらされた新奇な学としての哲学に身を投じた。国民国家の成立とともに輸入され蔓延したロマン主義に侵されて自我を肥大させ、一生を誤った。その誤謬を貫くために母国語と戦い、期せずして独自の哲学をなした。それは明治以来、あらゆる分野で見ることが出来た、輸入と国産化のドラマの一例であるだろう。」
福田和也「西田の虚、九鬼の空」『日本人の目玉』p.75