2008-05-06 横はつてゐる妙な形をしたものの正體が掴めなかつた 谷崎潤一郎 「月の光と云ふものは雪が積もつたと同じに、いろいろのものを燐のやうな色で一様に塗り潰してしまふので、滋幹も最初の一刹那は、そこの地上に横はつてゐる妙な形をしたものの正體が掴めなかつたのであるが、瞳を凝らしてゐるうちに、それが若い女の屍骸の腐りただれたものであることが頷けて来た。」 谷崎潤一郎『少将滋幹の母』