ロラン・バルト

「作家とは彼のパロールに加工する(たとえ霊感を受けた場合でも)者であり、職分としてこの加工の仕事に自らを傾注する者である。(略)それは、裁量に服することのない実践の目の眩むようなスペクタクルを提示することによって、世界を揺さぶることのできる力である。だからこそ、作家に向ってその作品を参加させることを要求するのは無意味である。(略)作家にとっての真の責任とは、文学を《参加のしそこない》として、現実の「約束の地」に注がれたモーゼの眼差しのようなものとして、耐え忍ぶことである。(略)さて著述家だが、彼らは《他動的》な人間である。(略)彼は自分のメッセージがおのれを振りかえって自分自身の上で閉じることを認めない、そこに自分の言わんとしたこと以外のことを区分して読みとられることを認めない。一方作家にとってはすでに見たようにまるで反対である。」
ロラン・バルト「作家と著述家」『エッセ・クリティック』1972