たくさんのひとと手をつなぐといふのは嘘だから


「それならば、 ぼくはでてゆく 冬の圧力の真むかうへ ひとりつきりで耐えられないから たくさんのひとと手をつなぐといふのは嘘だから ひとりつきりで抗争できないから たくさんのひとを手をつなぐといふのは卑怯だから ぼくはでてゆく すべての時刻がむかうかはに加担しても ぼくたちがしはらつたものを ずつと以前のぶんまでとりかへすために」

吉本隆明
「ちひさな群への挨拶」
「転位のための十篇」吉本隆明全著作集 1 勁草書房 1968年