「昔」は斯くの如くにして我々の、垣根も無い隣に住んで居る

「信州の多くの古人が、単にささやかなるその各自の生活のみならず、更に其性情と文藻との一端をさへ携へて、新たに現代の中へ遊びに来てくれたことは、血を引き縁に繋がる者の大いなる喜悦であらうと思ふ。「昔」は斯くの如くにして我々の、垣根も無い隣に住んで居るのである。」

柳田國男
「遊歴文人のこと」
『定本柳田國男集 第三巻』p.415