ネルヴァル自身は、それと対極をなす夢の世界をわが文学の領域とするという宣言

ネルヴァル『十月の夜』

「…このネルヴァルのエッセイは、第一章でディッケンズのレアリスムを大いにもちあげたあと、章が進むにつれて、夢の世界の魅力を前面に押し出してくるんです。(略)絶対的なレアリスムが過剰になることは戒められなければいけない、夢の世界にこそ魅力がある……まあ、そうはっきり書いてるわけではありませんが、レアリスムに新しい文学の理想、新しい文学のありかたを示す前衛という意味を担わせると同時に、ネルヴァル自身は、それと対極をなす夢の世界をわが文学の領域とするという宣言のようなところもあり、そういう意味で、『オーレリア』につながってゆく興味深い作品だと思います。」

菅野昭正の発言
菅野昭正・高階秀爾・平島正郎「リアリズムの時代」
ユリイカ」10月号 第六巻第十二号 青土社 p.215-216