それは依然として現象学的構えに内属している。

レヴィ=ストロースは、根底に論理的なものがあるというこの認識に衝撃を受け、それまで前論理的なものとみなされた未開の思考や制度を、音韻論を導入することによって解明可能なものとした。構造主義はそこからはじまるのであって、ソシュール構造主義の祖とよぶのは、マルクスフロイトをそうよぶのと同じ意味合いにおいてでしかない。しかし、構造主義がもはや「意識主体」なしに存立するような超越論的な「規則」を見出したとしても、それは依然として現象学的構えに内属している。」

柄谷行人
「主知性のパラドックス
『内省と遡行』1988 p.37-38