シェークスピアが精神をありのままに見た言葉だ

「「きれいはきたない、きたないはきれい」と、『マクベス』の魔女はいう。そして、これは時代の価値観の混乱を意味するよりも、シェークスピアが精神というものをありのままに見た言葉だというべきである。つまり、精神という場所ではどんな奇怪な分裂も倒錯も生じるということをあるがままに認めたところに、彼の比類ない眼がある。」

柄谷行人
マクベス論」『意味という病』講談社文芸文庫 1989 p.10