面は人体から肢体や頭を抜き去ってただ顔面だけを残した

「面は元来人体から肢体や頭を抜き去ってただ顔面だけを残したものである。しかるにその面は再び肢体を獲得する。人を表現するためにはただ顔面だけに切り詰めることがでけるが、その切り詰められた顔面は自由に肢体を回復する力を持っている。そうしてみると、顔面は人の存在にととって核心的な意義を持つものである。それは単に肉体の一部であるのではなく、肉体を己れに従える主体的なるものの座、すなわち人格の座に他ならない。」

和辻哲郎
「面とペルソナ」