小林秀雄はニセ者だ。夜店のアセチレンのニオイがしてます。

小林秀雄なんてのはニセ者だ。いうなりゃテキ屋、夜店のアセチレンのニオイがしてます。川端は千代紙細工、石川淳なんてコワもてしてるけどなにいってるかサッパリわからん。漱石、鴎外は書生文学、露伴は学者、荷風は三味線ひきだよ。スネもんでね。そこが少し面白い。三島?ヤリ手だナ。アバれるところはなかなかいいよ。ケンランたる作品が多いけどドキっとするものがないや。新しいところでは吉行、安岡なんてのはもたれ合いでマスかいてるようなもんだ。吉行は才能あるけどネ。小松左京ってのはオモロイやっちゃ。ボクのことタルガキホタルなんて書きよって。大江健三郎、あいつはゲイみたいなところがある。一種の知的ゲイだ。裏門あけっぱなし、自分のものはなんにもない。」

稲垣足穂
(週刊文春昭和44.4.14)

都築響一「筆極道の本懐」(荒俣宏監修『知識人99人の死に方』)で引用