それだけの構想が内から燃え上ってくるべきだと思う

「作者が自分の作物の


「筋の面白さ」


に惑わされるとは、


それに眩惑される、


酔ったようになる、


ということだろうが、


それならむしろそうであった方がいいと思う。


此れは各作者の体質にもよるから、


一概にはいえないけれども、


私自身はいつでもそうだ。


私はどんなつまらないものを書くときでも、


多少酔ったようにならなければ書けない。


話の筋を組み立てるとは、


数学的に計算をする意味ではない。


やはりそれだけの構想が


内から燃え上ってくるべき


だと思う。」

谷崎潤一郎
「饒舌録」