文学上の作品ではあるが、歴史文学とはいひかねよう

「(歴史小説には)古人の心事や


行動に新解釈を施さうとする


動機から出たものもあるが、


その新解釈がもし


その時代の思想によってではなくして、


それとは違つた


現代人の思想に本づいて


せられたならば、


それは歴史的変化を


無視したものであるから、


かゝるものは


文学上の作品ではあるが、


歴史文学とは


いひかねよう」

津田左右吉
「日本の文学史に於ける歴史文学」1951年10月『文学』